ポリフェノールに学ぶ新規機能性ポリマーの分子デザインと精密重合

 ポリフェノールは植物の葉,茎,樹皮,果皮,種子などに多く含まれているバイオマス由来の化合物です.抗酸化作用,抗炎症性,抗菌作用といった優れた生理活性をもつものが多く,これまでに医薬品や食品添加物として利用されてきました.本研究ではポリフェノールのビルディングブロックであるガロール基を側鎖に持つ,分子量の揃ったポリフェノール模倣高分子を合成し,その抗酸化活性,制菌性,吸着特性を調べています.
[1] ACS Sustainable Chem. Eng., 2016, 4, 3857–3863.
[2] ACS Biomater. Sci. Eng., 2019, 5, 5578–5596.
[3] Polym. Chem., 2020, 11, 249–253.


手術時の液体/気体漏れを防止する生体組織接着剤の合成

 濡れた肌に絆創膏が貼りつきにくいことからわかるように,ほとんどの接着剤にとって水は大敵です.接着剤と被着体の間に水が入り込み接着妨害層として働くからです.ところが,海産動物であるホヤはセルロースを含む被嚢と呼ばれる強靭な組織で覆われており,海底の岩などに強固に接着して生息しています.本研究ではホヤが長年の進化の過程で獲得した材料設計指針に学び,生体湿潤組織をも強固に接着可能な水中接着剤の開発を目指しています.
[1] Biomacromolecules, 2017, 18, 2959–2966.
[2] J. Photopolym. Sci. Technol., 2020, 33, 123–127.


マイクロプラスチックによる海洋汚染低減を目指した自己修復性高分子材料の設計

 人為的に交換・修理することが困難な環境(深海,体内,宇宙など)で使用されるポリマー材料が生物のように自己修復することができれば,メンテナンスコストの削減につながります.また,亀裂が小さい初期段階で修復することで,マイクロプラスチック発生の一因となっている高分子材料の細分化を未然に防ぐことができます.本研究では海洋生物が自己修復する仕組みにヒントを得て,特に海水環境下で効率的に修復する高分子材料を開発しています.海水中での修復では分子の運動性を担保しつつ,材料の膨潤を抑える分子設計が重要です.
[1] ACS Appl. Mater. Interfaces, 2016, 8, 19047–19053.
[2] RSC Adv., 2017, 7, 19288–19295.
[3] J. Mater. Chem. A, 2018, 6, 19643–19652.


ドラッグデリバリー・リキッドバイオプシーのための生体ナノ粒子工学

 ナノ粒子を用いたドラッグデリバリーにより,薬を患部に集積させ,治療効果向上と副作用低減が可能になります.また,生体に内在するナノ粒子を分離,精製,解析することによる疾患の早期診断が期待されています.本研究では,生体ナノ粒子(ウィルス,細胞外小胞など)と人工ナノ粒子(高分子カプセル,ポリフェノール粒子など)をモデル粒子として,これらの表面修飾やバイオ界面との相互作用について研究しています.
[1] Small, 2015, 11, 2032–2036.
[2] Adv. Healthcare Mater., 2015, 4, 1796–1801.
[3] Adv. Science, 2019, 1801688.
[4] Chem. Mater., 2019, 31, 2191–2201.


芽胞形成を模倣した可逆的1細胞コーティング技術の開発

 ある種の細胞は浸透圧ストレス,栄養飢餓,有害物質,乾燥,温度上昇,紫外線照射などに応答して,タンパク質からなる保護レイヤーを周囲に形成し,冬眠状態に入ります.ストレスフルな環境が終わりを告げると保護レイヤーを分解し,再び分裂を再開します.本研究では,この可逆的プロセスを模倣した生体適合性1細胞コーティング技術の開発を行っています.
[1] Science, 2013, 341, 154–157.
[2] Angew. Chem. Int. Ed., 2014, 53, 5546–5551.
[3] Nano Today, 2017, 12, 136–148.


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