金属–ポリフェノール錯体(MPN)による界面エンジニアリング

タンニン酸などのポリフェノールは様々な材料表面に対して高い吸着性を示します.そのため,金属イオンを添加して架橋すると界面局所でネットワーク構造を形成させることができます.この金属–ポリフェノール錯体(Metal-Phenolic Network,MPN)からなる被膜は,用いる金属イオンとポリフェノールの組み合わせに応じて異なる特性(弾性率,透過性,分解性など)を示します.特に鉄イオンとタンニン酸から調製したMPNは,生体適合性であり温和な条件下で分解するため,バイオ界面やナノ材料の表面改質に世界中で広く活用されています.
[1] Science, 2013, 341, 154–157.
[2] Angew. Chem. Int. Ed., 2014, 53, 5546–5551.
[3] Nano Today, 2017, 12, 136–148.
[4] Algal Research, 2022, 61, 102569.
[5] Sci. Rep., 2022, 12, 2071.


ポリフェノールからヒントを得た新規高分子材料の分子設計と機能探索

ポリフェノールは植物の葉,茎,樹皮,果皮,種子などに多く含まれているバイオマス由来の化合物です.抗酸化作用,抗炎症性,抗菌作用といった優れた生理活性をもつものが多く,これまでに医薬品や食品添加物として利用されてきました.本研究ではフェノール性水酸基やチオフェノール性水硫基を側鎖にもつ擬ポリフェノール高分子を合成し,その溶解性,吸着性,抗酸化活性,制菌性などを調べています.
[1] ACS Sustainable Chem. Eng., 2016, 4, 3857–3863.
[2] Polym. Chem., 2020, 11, 249–253.
[3] J. Am. Chem. Soc., 2022, 144, 2450–2454.


海棲生物の接着機構に学ぶ水中接着剤の開発と応用

濡れた肌に絆創膏が貼りつきにくいことからわかるように,ほとんどの接着剤にとって水は大敵です.接着剤と被着体の間に水が入り込み接着妨害層として働くからです.ところが,海棲動物であるホヤはセルロースを含む被嚢と呼ばれる強靭な組織で覆われており,海底の岩などに強固に接着して生息しています.本研究ではホヤが長年の進化の過程で獲得した材料設計指針に学び,湿潤環境下で生体組織をも強固に接着可能な医療用接着剤の開発を目指しています.
[1] Biomacromolecules, 2017, 18, 2959–2966.
[2] J. Photopolym. Sci. Technol., 2020, 33, 123–127.
[3] J. Mater. Chem. B, 2020, 8, 6798–6801.
[4] Nature Commun., 2022, 13, 1892.


薬物送達・体液診断のための生体ナノ粒子工学

ナノ粒子を用いたドラッグデリバリーにより,薬を患部に集積させ,治療効果向上と副作用低減が可能になります.また,生体に内在するナノ粒子を分離,精製,解析することによる疾患の早期診断が期待されています.本研究では,生体ナノ粒子(ウィルス,細胞外小胞など)と人工ナノ粒子(高分子カプセル,ポリフェノール粒子など)をモデル粒子として,これらの表面修飾やバイオ界面との相互作用について研究しています.
[1] Adv. Science, 2019, 1801688.
[2] Chem. Mater., 2019, 31, 2191–2201.
[3] ChemNanoMat, 2021, 7, 592–595.


湿潤環境下で自己修復する高分子材料の開発

人為的に交換・修理することが困難な環境(深海,体内,宇宙など)で使用される高分子材料が生物のように自己修復することができれば,メンテナンスコストの削減につながります.また,亀裂が小さい初期段階で修復することで,マイクロプラスチック発生の一因となっている高分子材料の細分化を未然に防ぐことができます.本研究では海棲生物が自己修復する仕組みにヒントを得て,特に海水環境下で効率的に修復する高分子材料を開発しています.海水中での修復では分子の運動性を担保しつつ,材料の膨潤を抑える分子設計が重要です.
[1] ACS Appl. Mater. Interfaces, 2016, 8, 19047–19053.
[2] RSC Adv., 2017, 7, 19288–19295.
[3] J. Mater. Chem. A, 2018, 6, 19643–19652.